久保亨・瀬畑源『国家と秘密 隠される公文書 』(2014年、集英社新書)

 昨年から何かと話題な森友問題。3月に入り、財務省が意図的に文書を改ざん(書き換え)していることが明らかになりました。そして、その改ざんに安部夫妻が関与しているのかどうかが焦点になっています。この問題は、「公文書」の管理が杜撰であり、責任の所在が不明確であるために起きた問題と考えることが出来るでしょう。

 それでは、この「公文書」の管理とはどういうものなのか?それを包括的に扱っているのがこの『国家と秘密 隠される公文書』です。

 

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

 

 

  この本は2014年に書かれたことが分かるように、特定機密保護法の制定を背景としています。しかし、特定機密保護法を批判する目的で書かれているというのでは必ずしもないのです。

しかし、法案に対する反対運動のなかで聞かれた「知る権利が犯される」という声には、近現代史の研究にたずさわり、日本の情報非公開と公文書管理の立ち遅れを日々痛感している者としては、しばしばある種の違和感を覚えざるを得ませんでした。

そもそも犯されるというに足るほどの知る権利を、戦後日本の国民は、持っていたのでしょうか?

 このように、戦後の情報の公開と公文書の利用条件そのものに疑いを投げかけるのです。その問題意識から、日本の公文書管理の歴史を追っていき、現状の問題点を整理し、各国の公文書管理と比較したうえで、特定機密保護法の問題点に迫るという構造になっています。

 目次を最後に乗せますが、新書ならではの読みやすさ、そして新書以上の情報量という現在の政局を理解するには最適の一冊です。

[目次]

序章 もともと秘密だらけの公文書―情報公開の後進国日本 久保 亨

 1 霞が関に疎遠な竹橋

 2 情報非公開の近現代日本

 3 二週遅れの情報公開

第一章 捨てられる公文書―日本の公文書管理の歴史 瀬畑 源

 1 敗戦時の文書焼却

 2 帝国憲法化の公文書管理制度

 3 戦後の公文書管理制度―高度成長期まで

第二章 情報公開法と公文書管理法の制定 瀬畑 源

 1 情報公開法の制定

 2 公文書管理法の制定

第三章 現代日本の公文書管理の実態と問題点 瀬畑 源

 1 公文書管理法と情報公開法

 2 行政文書の管理

 3 行政文書を閲覧するには

第四章 公文書館の国際比較 久保 亨

 1 市民革命から生まれた欧米の公文書館

 2 王朝の伝統を継ぐ中国の公文書館

 3 独立を記録するアジアの公文書館

 4 立ち遅れた日本

第五章 特定秘密保護法と公文書管理 瀬畑 源

 1 特定秘密のコントロール

 2 特定秘密保護法と公文書管理法

おわりに 公文書と共に消されていく行政の責任と歴史の真相 久保 亨・瀬畑 源

付録1 特定秘密の保護に関する法律

付録2 公文書等の管理に関する法律

付録3 行政機関の保有する情報の公開に関する法律

 

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)

国家と秘密 隠される公文書 (集英社新書)